良いリーダーとなるためには、どのような学びが役に立つでしょうか?
一番役に立つのは、本物のリーダーが語る、本物の物語を知ること。先駆者の実体験からくるノウハウは、実感を持って受け入れられます。
そんな本物の物語を、『リーダーの作法』で学びましょう。
『リーダーの作法』とは
『リーダーの作法』は、マイケル・ロップ氏による、リーダー向けのエッセイ集です。Netscapeでマネージャー、Appleでディレクター、Slackでエグゼクティブを経験した筆者が、リーターに必要な振る舞いについて語っています。
リーダーシップには、そっくり真似できるやり方もないし、明日からすぐ役立つ技術もありません。著者はこう述べています。
書籍の中から、管理人がお気に入りの、3つのエッセイをご紹介します。
パフォーマンス管理という言葉を口にしない
「7章 パフォーマンスに関する質問」より。メンバーのパフォーマンス管理についてです。
チームのパフォーマンスを管理しない。あなたのリーダーとしての態度が、パフォーマンスに影響を与える。
パフォーマンス管理なんてないほうがいい
プロジェクトがあまりうまく進んでいません。不穏な空気を感じます。
リーダーであるあなたは、ふと考えます。「A君はどうもパフォーマンスが上がっていないようだ」。
そしてあなたが、「パフォーマンスを管理しよう」と言ったり考えたりした、その瞬間、メンバーとの関わり方のルールが変わってしまいます。コミュニケーションは格式張って不自然になります。会話に妙な間が空き、ぎこちなくなります。
特に、リスクを回避するために、人を恐怖で押さえつけるような考え方。これは何が何でも避けるべきです。
会話を重ねる
「パフォーマンスを管理する」と考える前に、もっと大切な、やるべきことがあります。
- 会話を重ねる そのメンバと、最低でも3回は、しっかりと時間を取って会話をすること。
- 対面で会話する 建設的なフィードバックを得るために、お互い話し合うこと。メールやSlackではダメです。
- 明確に説明する パフォーマンスについてのギャップに対処するための、計測可能で具体的な行動を説明し、合意すること。
すべてが変わる
筆者は大事なことを述べています。
パフォーマンスには大抵の場合、コーチングの余地があります。会話を重ねることで、様々な視線の価値を学び、共感を築き上げることができます。そうすることで、より良いリーダーとなっていくのです。
実際には、あなたは、常にパフォーマンスを管理しています。あなたのリーダーとしての態度が、結果的にはチームのパフォーマンスに影響を与えるのです。
仕事を手放すこと
「11章 我慢の限界まで任せる」より。リーダーシップの最も大事な技能「任せること」についてです。
あなたの仕事を手放し、次の時代を担うリーダーに託す、それがリーダーとしての仕事。
任せること
リーダーになりたての頃は、メンバー全員の仕事が、自分の責任だと思ってしまいます。そして、あなたのチームに問題が起こったとき、こう思ってしまいます。
「もし私自身が担当エンジニアだったら、こんなことにはならなかったのに…」
その気持ちは、ありありと周りに伝わってしまいます。それではあなたへの信頼が失われるのです。
シー、静かに
あなたは、あるプロジェクトをジュリーに預けます。ジュリーは、これが初めてのリーダー経験。
- プロジェクト開始から30日後、進捗について懸念があります。ジュリーは解決策を準備して説明します。彼女の意見は、よく考えられてはいますが、間違っています。それでいいのです。初めてなのですから。あなたは別のやり方を議論します。ジュリーは自分の考え方を見直します。
- プロジェクト終盤、性能問題により1ヵ月分の予定外作業を余儀なくされました。評価はB評価。あなたの頭の中にささやきが聞こえます。「私がキーボードを叩いていたら、満点だったのに」。シーッ、静かに。
考えてみてください。この経験で、あなたはこんな重要な成果を得られています。
- ジュリーに仕事を預けたことで、あなたは信頼を得られました
- プロジェクトの雲行きが怪しいときに、過剰反応せず一緒に考えました。さらに信頼を得られました
- ジュリーはやり遂げました。プロジェクトを完遂したのです。貴重な体験を授けることができました
そう、このB評価は、あなたが信頼できるリーダーであることの証なのです。
リーダーを増やすという仕事
慣れ親しんだ仕事を、他の人に完全に任せること。それは、その人の能力を信頼している証です。
筆者の言葉です。
仕事を手放すのは簡単ではありません。でも、あなたがやってきたような仕事が、あなたを良いリーダーに育てたのです。それを、チームの中の、次の時代を担うリーダーに託しましょう。
コバヤシマルのマネジメント
「25章 コバヤシマルのマネジメント」より。コバヤシマルとは、スタートレックの世界に出てくる民間貨物船の名前です。
あらゆる手で、予測できないことを予測し、対処すること。
コバヤシマル・シナリオ
23世紀のスタートレックの世界。士官候補生向けシミュレーションプログラムでは、こんなシナリオが組まれています。
シミュレーションプログラム:
中立地帯にいる民間貨物船「コバヤシマル」から、遭難信号を受信した。期せずして自艦はクリンゴンの巡洋艦と対峙し、戦闘を展開。
あなたは、危険を冒して救助しますか?コバヤシマルの救助をあきらめますか?
実はこのシミュレーションプログラム、どちらも達成することは不可能。戦闘に勝利し、なおかつコバヤシマルを救う手立てはありません。
このような、どうやっても勝ち目のないシナリオのことを、コバヤシマル・シナリオといいます。
「勝ち目のないシナリオ」なんてない
では、コバヤシマル・シナリオに対し、どう判断するべきなのか…?という話では実はありません。スタートレックの話には続きがあります。
シミュレーション訓練の前日。このプログラムを見たカーク艦長は、なんとシミュレーションプログラムを書き換えて、完全勝利が可能となるようなシナリオとしてしまう…
つまりこういうこと。そもそも、コバヤシマルのような状況になる前に、止めるのです。
予測できないことを予測する
コバヤシマルの事件は、さりげなく突然に始まります。原因は分かりません。でもなにかしらの異常事態です。
コバヤシマルのような状況に陥らないためには?結局のところは、あらゆる手を使って、小さな兆候を見逃さないことです。
- 文章で状況を説明する
- 計画の草稿を、利害関係のない信頼できる人3人で検証する
- 変化によって影響を受けると予想されるすべての人とチームをリストに書き出す
- コミュニケーション計画を作成する
それでも、急速に技術が変化していく中で、規模の大小を問わず常に破綻は起きます。しかし、その失敗の中にも教訓があります。その教訓は、同じ失敗を繰り返さないための作戦として、不可欠なのです。
まとめ
「リーダーの作法」は、明日すぐに役立つような劇的勝利や、一発逆転の知識ではありません。
大事なことが、書籍の副題として添えられています。「ささいなことをていねいに」。
これが、あなたに崇高なリーダーシップを授けます。
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